競争の番人

競争の番人 <ネタバレ注意><個人の感想です>

 

「競争の番人」は、公正取引委員会が舞台だ。刑事もの、医療ものが定番の中で、公正取引委員会が舞台だというのは、それだけで興味を惹く。つい、労働基準監督局を舞台としたドラマ「ダンダリン 労働基準監督官」(日本テレビ)を思い出した。竹内結子の段田凛はカッコよかった。今さらながら、竹内結子が亡くなったのは残念だ。

 公正取引委員会がどのような仕事をしているのか、どのように証拠を集め、立証していくのかが垣間見えて、興味深い。

 坂口健太郎、杏、寺島しのぶ大倉孝二小池栄子大西礼芳、と役者も揃っている。坂口健太郎小池栄子は、「鎌倉殿の13人」で共演している。北条頼時(→泰時)と北条政子、甥―伯母の関係だ。坂口健太郎は、「鎌倉殿の13人」では若く、まだ頼りない若者を演じている。役者として当然といえば当然だが、それぞれの役になりきっている。「とと姉ちゃん」の星野武蔵、「シグナル」の三枝健人、「おかえりモネ」の菅波幸太朗(#俺たちの菅波)も印象深い。「競争の番人」では、20歳で司法試験に合格し、東大法学部を主席で卒業、好き好んで(失礼)公正取引委員会に就職するという、クールで変わり者の小勝負勉を演じている。

 第1話から第3話までは、「ホテル天沢」が舞台。ターゲットは天沢雲海(山本耕史)だ。雲海は一筋縄ではいかない男。長澤(濱津隆之)、碓井(赤ペン瀧川)が立ちふさがり、難攻不落の城のようだ。山本耕史も、「鎌倉殿の13人」で、北条義時小栗旬)の盟友、三浦義村という重要な役どころを演じている。このところ主演が少ないが、もう一度「居眠り磐音」が見てみたい。第4話、第5話のターゲットは、芝野竜平(岡田義徳)。岡田義徳はいろいろなドラマに出ているが、屈折した敵役を演じさせたら、天下一品。「科捜研の女」第15シリーズの「工藤貴志」は特に印象に残っている。このドラマでは、まさかのいい人チェンジ。

 第6話は、着物業界の女帝、赤羽千尋真飛聖)VS公正取引委員会 桃園千代子(小池栄子)と思っていたら、実は女帝と新参者、井手香澄(萩原みのり)の熾烈な争い。桃園、井手側の敗北かと思いきや、遺恨をサラッと流してハッピーエンド、というよくわからない回だった。

 真飛聖は、「相棒」のカイトこと甲斐享(成宮寛貴)の恋人、笛吹悦子を演じていた。元

宝塚花組のトップスターだけあって、和服がよく似合っているし、貫禄もある。小池栄子との対決は見どころがあった。

 萩原みのりは、「お茶にごす」「ケイ×ヤクーあぶない相棒―」「初恋の悪魔」と、このところよく見かけるが、不思議な存在感を感じさせる役者だ。この役も、いじめられていると思っていたら、実はしたたかに汚い手を使う人で、でも結局はいい人、という難しい役どころを見事に演じている。

 毎回、冒頭に出てくる公正取引委員会のレクチャーも勉強になる。クイズ形式というのも斬新な手法だ。公取が、地検特捜部や金融庁のように強力な権限を持っているわけではないことがよくわかる。刑事もの、医療もの、法廷ものが多いドラマの世界で、公正取引委員会をテーマとして取り上げたスタッフに敬意を表したい。

<原作> 新川 帆立(元彼の遺言状)

<脚本> 丑尾 健太郎(愛しい嘘〜優しい闇)、神田 優(愛しい嘘〜優しい闇)

穴吹 一朗(信濃コロンボ)、蓼内 健太(アンサング・シンデレラ)

<演出> 相沢 秀幸(ミステリと言う勿れ)、森脇 智延(イチケイのカラス)

<プロデュース> 野田 悠介(アンサング・シンデレラ)

<協力> 公正取引委員会

<制作・著作> フジテレビ